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新型コロナ重症患者の“最後の切り札”ECMO”

新型コロナ重症患者の“最後の切り札”ECMO”

公開日:2020.12.04

新型コロナウイルス感染症の流行は「第3波」を迎え、新規感染者数が急増し、なかでも重症化する患者が目立っています。こうした重症患者への“最後の切り札”とされるのが、人工心肺装置ECMO(Extracorporeal Membranous Oxygenation:体外式膜型人工肺)と呼ばれ、肺機能を代行する装置です。

人工肺は肺胞と同じ原理を再現

新型コロナウイルス感染症の重症患者では、時に重度の肺炎による呼吸不全が起こるため、人工呼吸器で肺に強制的に高濃度の酸素を送って呼吸を補助します。しかし、さらに肺炎が悪化すると肺胞が著しく損傷し、酸素が十分に取り入れられない状態に陥ります。このような場合には体外で肺機能の代替をして体内に酸素を取り込み、肺を一時的に休ませるECMOが必要となります。

ECMO治療を行うには、太ももの付け根の静脈にカニューレと呼ばれる太い管を挿入し血液を体外に取り出し、遠心型のポンプを用いて回路へ通します。そして、人工肺で酸素と二酸化炭素の交換を行い、カニューレを挿入した首の静脈に戻します(図)カニューレの挿入はX線や超音波の透視下で行いますが、高い技術力が求められます。

人工肺は肺胞と同じ原理を再現しています。血液が通る人工肺の内部には多くの管が通り、その中を高圧の酸素が流れます。この管に多く含まれる酸素は血液側に、血液中に多く含まれる二酸化炭素は管側に流れる仕組みとなっています。

様々な合併症のリスクと隣り合わせ

ECMOは血液を体外に出す特殊な治療(体外循環)なので、感染症や血栓症、腎不全など様々な合併症が起こりやすいとされます。人工肺や回路内で血液を固まりにくくするため抗凝固薬を使用するので脳出血のリスクも高まります。また、ECMO使用中にカニューレが体から抜けたり、カニューレに血液が詰まったりするなどのトラブルがあると、血液循環が滞り、死に繋がる危険性があります。このため、24時間態勢でモニターなどの監視が必要となり、ECMOに精通した医師、看護師、臨床工学技士など10人以上がチームとして対応しなければなりません。治療期間は数週間以上に及ぶこともあります。

日本集中治療医学会などによると、今年4月20日までに新型コロナウイルスに感染した重症患者90人にECMOを装着し、治療を終えた患者の約70%が回復したと報告されています。
 
現在、全国に約1,400台のECMOが配置されていますが、ECMOを管理できる医療従事者の数は少ないといわれます。新型コロナウイルス感染症の重症患者が増えているなか、ECMOに習熟した医療従事者を増やすことが今後、重症者を救う鍵となります。

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アソースナビ編集部

メディアスグループは、医療機器の販売を中心とした事業を展開しています。医療に携わる私たち(Medical+us)は、医療現場や人々の健康的な明日へ役立つ情報をお届けする情報発信源(Media)の役割も果たしていきたいと考えています。

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