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公開日:2025.11.12
高齢化社会の進展とともに、患者の医療ニーズが複雑化し、多様化しています。そのような時代背景の中で注目を集めているのが「総合診療医」です。日本では2018年から総合診療専門医制度が始まり、特定の臓器や疾患にとらわれず、患者を全人的に診る総合診療医は、地域社会の健康を支える重要な存在です。
第2回では、総合診療医に求められるスキルや国内の分布状況、さらには海外との比較を通じて、総合診療の今とこれからについてまとめます。
総合診療医は、患者の「何となく調子が悪い」といった、はっきりしない症状にも的確に対応できることが求められます。そのためにまず必要となるのが臨床推論力です。限られた情報の中から、可能性のある病気を広く挙げ、鑑別しながら診断へと導く力が不可欠です。
また、患者本人だけでなく、その家族や多職種との連携をとるためのコミュニケーション力も非常に重要です。患者一人ひとりの背景や価値観を尊重しながら、納得のいく医療を提供することが求められます。
さらに、地域に根ざした医療を担うためには、その土地の文化や住民の生活様式、利用可能な医療資源を理解する地域理解力も必要です。地域ごとに異なるニーズに柔軟に対応する力が、総合診療医には求められます。
加えて、地域医療の質を高めるための教育・研究力も重要視されています。医療現場だけでなく、教育機関や研究活動にも積極的に関わることで、地域全体の医療レベルの向上に貢献していくことが期待されています。
海外では、日本に先駆けて総合診療が医療制度の中で重要な役割を担ってきました。各国の医療体制において、総合診療医は地域医療の要として機能し、患者に対する初期対応から継続的な健康管理まで幅広く関与しています。
英国では、総合診療医(General Practitioner)が地域医療の中心的存在として、患者の最初の相談窓口を担います。多様な症状に対応し、必要に応じて専門医へ紹介するほか、慢性疾患の長期管理、高齢者への在宅医療、がんの診断、紹介、緩和ケアなどにも携わります。看護師やソーシャルワーカーと連携し、包括的かつ継続的なケアを提供する体制が整っています。
米国の総合診療医(Family Physician)は、患者の健康管理の窓口として、日常的な診療、慢性疾患の管理、予防医療などを担います。外来診療に特化し、入院診療はホスピタリストが担当する分業体制が一般的です。地域によっては入院管理を担うFamily Physicianも存在します。看護師や診療看護師などとのチーム医療を通じて、効率的で質の高いケアを実現しています。また、医療保険制度の中で専門医への紹介役を果たすことで、医療資源の適正な活用にも貢献しています。
オーストラリアでは、総合診療医(General Practitioner)が風邪や怪我の診察、健康診断、専門医への紹介などを幅広く担当し、「かかりつけ医」としての役割を果たしています。都市部に加え、へき地では「ルーラルジェネラリスト」と呼ばれる医師が、救急医療や産科などの専門的な診療も担っており、総合診療の一分野として位置付けられています。なお、ルーラルジェネラリストは追加専門研修制度(Rural Generalist Program)により育成されています。
日本では、患者が自由に医療機関を選べる「フリーアクセス制度」が長らく続いてきました。そのため、初期診療を専門とする総合診療の制度化が他国に比べて遅れている現状があります。
こうした背景もあり、総合診療医の存在がまだ十分には認知されておらず、専門医制度の中でも新しい分野としての位置付けにとどまっています。しかしながら、地域包括ケアの議論が進む中で、総合診療専門医の役割が再評価されつつあります。今後は、総合診療医の養成体制の整備やキャリアパスの明確化、そして国民への認知度向上が重要な課題となります。
また、海外の事例を参考にしながら、日本独自の地域医療構想と連携することで、持続可能な医療提供体制を築いていくことが求められます。
総合診療医は、病気そのものだけでなく、患者の背景や暮らしにも寄り添う「総合力」を持つ医師です。高齢化に伴い、在宅医療の担い手としても期待されています。今後ますます進む高齢化や地域医療の需要に応える存在として、その役割はさらに大きくなっていくでしょう。
制度的な支援と社会的な理解が進むことで、総合診療医の活躍の場は一層広がっていくことが期待されます。
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