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がんとの鑑別が重要となるIgG4関連疾患

がんとの鑑別が重要となるIgG4関連疾患

公開日:2022.05.23

IgG4関連疾患は、全身の臓器に炎症が起きてしこりが生じる免疫の病気で、21世紀初頭に日本でその概念が確立され、世界的に注目を集めました。この病気はがんと似ていることから、間違えられて臓器を切除されるケースもあり、詳しい専門医の診察を受けて鑑別することが重要とされます。

別々の疾患が1つのカテゴリーに

IgG4関連疾患にみられる全身の臓器のしこりは以前から知られていましたが、別々の病気として扱われてきました。しかし、がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科(現院長)の神澤輝実氏らが2001年頃、膵臓の炎症で黄疸が現れる自己免疫性膵炎の患者に、胆管や唾液腺、涙腺の腫れやしこりが多いことを発見し、それらの組織に免疫関連物質IgG4の分泌細胞が多く浸潤していることを確認しました。さらに、IgG4値の上昇と共に全身の臓器に炎症が起き、これらの症状がステロイド治療で改善することを明らかにしました。これらの共通点を示す研究成果を踏まえ1つの病気のカテゴリーにまとめて、2003年にIgG4関連疾患という新しい病気の概念を提唱しました。その後国際的にも注目され、IgG4関連疾患に関する国際シンポジウムは多数開催されています。

高齢の男性に好発

IgG4関連疾患は病原体などから身を守る免疫の異常によって起こると考えられ、代表的なものとして、自己免疫性膵炎と涙腺や唾液腺が腫れて視力障害が出るミクリッツ病が挙げられます。しこりができる臓器は、脳下垂体、涙腺、唾液腺、甲状腺、肺、肺門リンパ節、胆管、腎臓、膵臓、腹部大動脈、前立腺などさまざまで、病変は複数臓器に及ぶことが多いですが、単一臓器の場合もあるとされます。発症患者の平均年齢は約60歳で、全国の患者数は約8,000〜1万5,000人と推定され、高齢の男性患者で多いこともわかってきました。国の難病にも指定されています。しかし、どんな仕組みで発症するかなどよくわかっていないことも多く、原因や発症メカニズムについて研究が続けられています。

膵臓がんと診断されるケースも

診断は、臓器のしこりなどの画像所見や血液中のIgG4高値などを考慮してなされます。症状としては、肌が黄色くなる黄疸や涙の量が足りなくなるドライアイ、唾液の分泌量が減り口の渇きを感じるドライマウスなどが現れる場合があります(これら二つの症状は出ることもありますが、鑑別しなければならないシェーグレン症候群に比べると出現頻度は大きく少ないことがわかっています。主症状は、両側の瞼と下あごの腫れです)。臓器のしこりは、がんと間違われやすく、以前は膵臓がんと診断し切除手術をしたら自己免疫性膵炎だったというケースがあったと報告されています。治療としては炎症を抑えるステロイドの内服が有効とされます。神澤氏は「今でも症状によってはがんと間違われる場合もあるため、詳しい専門医などの診察を受けて鑑別することが大切」と強調しています。

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アソースナビ編集部

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