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VRで医療の可能性を拡げる

VRで医療の可能性を拡げる

VR(Virtual Reality)は、ゴーグルやヘッドセットなどの専用デバイスを装着することによって、CGで描かれた仮想空間をリアルに体感できる技術で、「仮想現実」と呼ばれます。医療はVRの導入が進む分野の1つで、研修、手術支援、遠隔医療、リハビリなどでさまざまな新しい試みが行われています。その中からいくつかの実例を紹介します。

CT画像を立体的に空間で共有し、治療計画や手技トレーニング、オンライン診療へ

 医療現場では、CTやMRIなどによる3次元の画像データが2次元の画面上で利用されています。しかし、2次元の画面から得られる情報には限りがあり、特に手術前のプランニングなどでは立体空間的な理解が必要となります。
 HoloeyesではVR/MR(Mixed Reality)などのテクノロジーを駆使し、CT/MRIなどの3Dデータを立体空間に提示し、VR/MRゴーグルを装着することで、臓器や血管をあらゆる角度から観察できるようにしました(図1)。このため、今まで見えにくかった解剖の立体関係や病変の広がり、奥行きなどが理解しやすくなり、スムーズかつ安全で正確な手技のサポートに繋がりました。がん・感染症センター東京都立駒込病院外科(肝胆膵)では、腹腔鏡による膵臓がんの手術の際にVRを併用し、血管が複雑に入り込んでいる膵臓において腫瘍部位を立体画像で確認しながら手術が進められています。
 また、複数の医療スタッフがリアルタイムに3Dモデルを仮想空間と現実空間で同時に共有でき、治療計画や手技トレーニングが行える「バーチャルセッション」というサービスも追加され、オンライン診療として遠隔地からの参加も可能です。今年7月には、UAEドバイのEmirate speciality Hospitalの手術室と東京のNTT東日本関東病院の手術室をリアルタイムにオンラインでつなぎ、複合現実空間で腹腔鏡下胃切除術に対するXR(Extended Reality)遠隔手術支援が行われました。
これらの機能の一部は医療用画像処理ソフトウェア「Holoeyes MD」として管理医療機器(クラスII)認証を取得し、2020年6月より一般名称:汎用画像診断装置ワークステーション用プログラムとして全国で発売されています。

図1:手術スタッフ間で3Dモデルを仮想空間と現実空間で同時に共有ができる「バーチャルセッション」

遠隔地の患者の動作を3次元で確認

 順天堂大学医学部附属順天堂医院脳神経内科の研究グループは、世界初となる3次元オンライン診療システム「Holomedicine」を開発しました。このシステムは、遠隔地にいる患者の3次元動作情報を離れた場所にいるドクターのヘッドマウントディスプレイ(HoloLens)上に投影し、患者が目の前にいるかのように診察できるものです。
 Holomedicineは、MRという技術を駆使し、遠隔地にいる患者を、マーカレス3次元モーションスキャナー(Kinect v2)を用いて、3次元動作情報をリアルタイムでスキャンし、離れた場所にいるドクターのヘッドマウントディスプレイに投影する仕組みです。患者にもHoloLensを着けてもらい音声通話すれば、実際に双方が対面しているような感じになります(図2)。パーキンソン病患者100人を対象に、Holomedicineを用いて診療した場合の運動症状のスコア(UPDRS-Ⅲ)は、これまでの対面による評価によるスコアと比較すると、高い相関があり、対面診療の代わりになり得ることがわかりました。これまでのオンライン診療では、2次元的な情報しか得られないため、歩行や姿勢などの情報を得にくいという難点がありました。
 新型コロナウイルス感染症の流行の中で、3次元オンライン診療システムはポストコロナを見据えた新しいオンライン診療として期待されます。

図2:ドクター側(右)と患者側(左)は離れた場所にいる相手がヘッドマウントディスプレイを介して目の前にいるように映ります。