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病院における事業継続計画(BCP)のあり方
重要事項は電源、水、医薬品・医療資器材の確保

昨年(2018年)は、その年を表す漢字「災」が示すように大阪府北部地震、西日本豪雨、北海道地震など大きな災害が相次ぎ、災害発生エリアの医療機関の業務に大きな支障をきたした。非常時に医療機関がその機能を継続維持するには、今どのような対策を講じる必要があるのかをレポートする。

少ないBCP策定病院

昨年9月に北海道を襲った最大震度7の地震では、400近くの病院で停電が発生し、非常用電源の燃料が足りず人工透析を実施できなかったり、人工呼吸器の使用継続が困難になったりする病院が相次いだ。西日本豪雨の際に、ある総合病院では、非常用の電力設備が水没して電源が喪失したほか、断水で診療が続けられなくなった病院が複数あった。厚労省は「BCPが策定されていれば対応できたはず」と指摘している。

BCPとは、Business Continuity Planの頭文字で、災害などの緊急時に、企業や自治体が業務を続けたり、中断しても早期に復旧するための事前計画を指すもので、被害想定、優先すべき業務、人員の配置案などを定めておく。厚労省は東日本大震災後の2012年3月に全国の医療機関にBCPの策定を促した。また、熊本地震後の2017年3月には、災害時に24時間体制で患者を受け入れる災害拠点病院(全国736病院)に18年度中のBCP策定を義務づけた。

医療機関は平時よりも有事の方がその機能を発揮することが求められる。耐震などハード面のほか、電源や水の確保、燃料や医薬品、医療資器材などを優先的に供給してもらうシステムの構築などが鍵となる。しかし、内閣府が2013年に発表したサンプル調査では、BCPを策定している医療機関は医療施設全体の7.1%と少なかった。その理由としては、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」、「策定する人手を確保できない」、「BCPの内容に関する情報が不足している」などの意見が寄せられた。

電力依存度が高い病院業務

災害拠点病院のBCPで想定される業務としては、東京都福祉保健局作成の「大規模地震発生時における災害拠点病院のBCP策定ガイドライン」によると、➀症状のある患者の手術、外傷患者の治療、ICU患者への投薬など、災害発生時にも中断が許されない優先度の高い通常業務②トリアージや被災した重症患者の治療、不足する医療資器材の手配など災害時応急対策業務③地震等で破損したライフライン確保など応急復旧業務(非常用発電機の稼動、井戸水の下水への使用開始)➃破損したライフラインの復旧など医療サービス機能を回復するために優先度の高い復旧業務(寸断した電気幹線の交換、破損した給水管の交換)⑤災害に備えるために日常的に実施しておく備えに関する業務(BCPの運用・点検、マニュアルの策定)が挙げられる。このうち、重要事項は電源、水、医薬品、医療資器材の確保となる。

昨今の病院業務においては電力の依存度が高まっている。以前は紙ベースで行われていたカルテ、管理業務、物資調達などはすべてパソコン対応となっている。また、滅菌器材、MRI、CTなども電気消費が大きく、電源確保が最重要となる。物資の備蓄や非常用電源の燃料確保は3日分程度が一般的とされる。

災害時でも出荷ルートを確保

物流では、災害によって道路が寸断され、物資を運ぶトラックなどが病院にたどり着けない事態が発生する。非常時の備蓄のほか、配送の代替ルートなどを卸業者と協議しておく必要がある。

メディアスグループでは、東日本大震災を教訓にBCPの観点から物流センターの強化に取り組み、首都圏、静岡、群馬の各物流センターが連携し、災害時でも医療資器材の供給を維持できる体制を構築している。中でも取り扱い物量の多い首都圏では、免震構造の物流センター(神奈川県相模原市)を稼動させている。倉庫内は商品の落下や破損を最小限に抑えられるよう設計され、また、建屋だけでなくランプウェイにも免震構造を採用しているため大規模災害時にも出荷ルートが確保できるほか、電源の供給が停止された場合も、自家発電装置による72時間以上の電源供給が可能となっている。同センターは、約1万1500品目の在庫があり、首都圏の約650施設に医療資器材を供給しているが、災害時に備え2週間分を在庫している。

予想される巨大災害

しかし、どんな施設や備蓄が整っていても医師や看護師がいなくては診療活動が行えない。また、病院職員がいなくては病院機能が停止する。それゆえ、いかに災害時にいかに人を確保するのかが重要なポイントといえる。

南海トラフ地震の被害想定は最悪で死者32万3千人、負傷者62万3千人、東京都の首都直下型地震における被害想定は死者2万3千人、負傷者11万3千人といわれ、病院のBCP策定は急務である。